『悪人』

『悪人』

「人に恵まれてきた」

そう言える人は幸せだと思う。

ただ、それは必ずしも、
いい人ばかりに囲まれてきたという意味ではない。

振り返れば、
理不尽なことを言う人もいれば、
こちらの善意を平気で踏みにじる人もいた。

できれば二度と会いたくない。

でも、不思議なもので、
そういう人間ほど妙に記憶に残っている。

あの人がいたからこそ、
自分の未熟さに気づいたこともある。
反面教師として学んだことだって少なくない。

もちろん、
だからといって感謝しているわけではない。
嫌なものは嫌である。

ただ、
人との出会いを善人か悪人かだけで終わらせてしまうのは、
少々もったいない気もする。

自分を成長させてくれる人が、
必ずしも自分に優しいとは限らない。

むしろ、歓迎できなかった出会いが、
後になって自分の財産になることもある。

人に恵まれるとは、いい人に囲まれることではなく、
出会った人間を自分の人生にどう生かせるか、
ということなのかもしれない。

まあ、
そう考えると秋山も随分と人に恵まれてきた。

ということは、
秋山は随分と悪人にも恵まれてきた
ってことか?

いや、待てよ。

悪人って、俺のことか?