『可愛がる』

『可愛がる』

先日、
数年ぶりに後輩と食事をした。

昔から控えめで、謙虚な男である。

料理が運ばれてきても、
自分から箸をつけようとしない。

「遠慮せず食べなよ」

そう言うと、
申し訳なさそうに少しだけ取り分ける。

そのうち、
見るに見かねて俺がせっせと料理を取り分けていた。

これは気遣いなのだろうか。

料理を取り分ける人は、
一般的に「気遣いのできる人」と思われがちだ。

でも、実際はどうだろう。

本来、何をどれだけ食べるかは本人の自由だ。
そこにわざわざ介入しているとも言える。

つまり、世話を焼くという行為には、
少なからず自分の都合も混じっている。

相手に喜んでほしいという気持ちもあれば、
世話を焼いている自分が満足している部分だってある。

そう考えると、
「可愛がる」という言葉はなかなか面白い。

可愛がられる側の意思とは関係なく、
可愛がる側が勝手に可愛いと思っている。

ずいぶん一方的な言葉ではないか。

とはいえ、
誰にでもそんなことをするわけじゃない。

相手に好意があるからこそ、
つい手を出してしまうのだろう。

数年ぶりに会っても、
俺にとっては相変わらず可愛い後輩だった。

たまにはこうして、
世話を焼くのも悪くない。

次回も遠慮するようなら、
また取り分けてやろう。

本人が食べたいかどうかは、知らんけど。