ちょっと前に、久々にしみじみと心に染み入る映画を観ました。
「A Ghost Story」という作品です。
交通事故で突然この世を去った男が、白いシーツを被った幽霊としてかつての家に留まり続けるという話です。
愛する人の悲しみも、その後を生きる他の誰かの人生も、ただ静かに見守るしかできない幽霊の主人公の視点を、観客はずっと追体験していきます。
時間は流れ、家も街も姿を変えていく中、彼だけがそこに佇み続けているのですが、その中で改めて彼自身も自分の人生を生き直していくことになります。
喪失と記憶、そして留まることや手放すことの意味を、落ち着いた静謐な映像で描いています。
誰かを残して死んでいくことと、誰かに先立たれて生きていくこと。
存在や現象は変容して消えゆく一方で、何か・誰かがそこに生きていたという事実は確かにあるということ。
現在という時間は、単なる過ぎゆく点ではなく、そのようなすべての軌跡の集積としてあるということ。
いずれ全て終わってしまう人生の中で、それでも生やこの世界を肯定できるということ。
この世に未練を残した幽霊というありふれたモチーフでいながら、とても広がりと深みのある物語になっていました。
何となくレトロな映像の質感(画角もブラウン管テレビのようだった)や、静かでいて凄みのあるカット、たまにクスッと笑えるシーン、切なさと明るさが入り混じるような後味などなど、とても素敵な映画でした。
映画の中で一つキーになるのが、とあるメモ書きです。
あのメモは何だったのか、というのは観た人によっても全く受け取り方が変わってくると思います。
見守り続ける幽霊の物語ご覧になった方がいらしたら、ぜひ感想会してみたいです。
https://a24films.com/films/a-ghost-story
FIRST CLASS
佐伯 渉(さえき わたる)