『波長』

『波長』

「緊張してるね」

悪気なく言ってしまうことがある。

でも、
あの一言で楽になった人を、
僕はあまり知らない。

人はどういうときに緊張するんだろう。

大勢の前に立つとき。

初対面の人と会うとき。

たいていそこには、
「他者」がいる。

心拍数が上がる。

思うように話せない。

いつもの自分が出せない。

だから緊張は、
悪いものとして扱われがちだ。

でも、
緊張は本当に欠点なんだろうか。

僕はそうは思わない。

それだけその場を大切にしている証拠でもあるし、
まだ新鮮な感覚が残っているということでもある。

場数を踏めば慣れることもある。

それだけじゃない。

同じ人でも、
相手が変われば緊張の仕方は変わる。

不思議なくらい自然に話せる人もいれば、
どこかぎこちなくなる人もいる。

緊張は、
一人で起きている現象じゃない。

その場の空気や、
相手との距離感の中で生まれるものだ。

「緊張してるね」

その一言の前に、
少しだけ考えてみる。

その緊張は、
相手だけのものなんだろうか。

緊張を相手の性格として片付けない。
その場にいる以上、
自分もその空気の一部なんだから。