人は、
心に扉を持っている。
鍵を掛けているつもりはなくても、
気づけば自然と閉じている。
都会ではそれが当たり前。
それが癖なのか、
防衛本能なのかは分からない。
「あの人は何を考えているか分からない」
昔から、
そんな言葉を向けられることがある。
でも実際は、
自分でもよく分かっていない。
どこまで開けて、
どこから閉じるのか。
その境界は、
案外曖昧だ。
他人の扉を勝手に開けるのは、
本来、礼儀を欠くことなのかもしれない。
だから人は、
ノックを覚える。
距離を測って、
空気を読んで、
踏み込みすぎないようにする。
でも、
たまにいる。
いきなりノックもなしに、
こちらの扉を開けてくる人が。
最初は少し驚く。
だがその乱暴さが、
妙に新鮮だった。
無遠慮が心地よい刺激に変わる瞬間。
重そうに見える扉でも、
門番がいなければ、
案外あっさり開いてしまう。
それはまるで、
閉ざしていた側が、
開けられるのを待っていたのではないかとさえ思える。
人と人の間には、
予定調和じゃ起きないことがある。
不法侵入者が、
内側の景色を変える。
だからきっと、
人と接することは面白い。
扉というのは、
守るためじゃなく、
開けるためにあるのかもしれない。