『手当』

『手当』

人は案外、些細な言葉で傷つく。

何気ない一言。
悪気のない会話。

そんなもので、
それまで積み上げてきたものが崩れることもある。

第三者から見れば、
「そこまで気にしなくても」
と思うようなことでも、
本人にとっては深く刺さっている。

だから話を聞く。

少しでも楽になればと思うし、
できることなら元気になってほしいとも思う。

でも、
人の傷は、
誰かが代わりに治すことはできない。

どれだけ言葉を尽くしても、
どれだけ理解したつもりになっても、
その痛みを完全に知ることはできない。

本当のところは、
本人にしか分からない。

それでも、
何かしてあげたいと思ってしまう。

それは半分、
自分が安心したいという気持ちも、
きっと混ざっている。

早く元気になってほしい。
早く立ち直ってほしい。

その願いは、
ときに相手の時間を急かしてしまう。

無理に治そうとしない。
傷には傷が癒えるまでの時間がある。

第三者にできることは、
治療じゃない。

痛みを分かったふりをせず、
分からないまま隣にいること。

決して分かりきれない相手の心に、
それでも手を伸ばす。

そこに意味があるのかを問うのは、
ナンセンスだ。