『春涙』

『春涙』

静かな暗闇の中で、
一人涙腺が緩む。

緩めることは、
決して簡単じゃない。
でも、自然に緩むというのが、
一番の理想。

涙は不思議だ。
それは悲しいから流れるとは限らない。

むしろ、
何かをちゃんと感じたときほど、
静かに溢れてくるものがある。

外に出ると、
人々の衣服は春めいて、
景色も確かに冬の終わりを告げていた。

ある人は桜を見上げて、
ある人は笑いながら写真を撮っている。

その光景も、もちろんいい。

でも、
それとは少し違う春の過ごし方もある。

花を見て心が動くこともある。
けれど、
涙まで辿り着く瞬間はそう多くない。

何かに深く触れて、
自分の内側が揺れる。

春は、
ただ華やぐだけじゃない。

雪解けのように静かに溶けて、
静かに流れていくものもある。

それを、
今日、少しだけ知った。