おから

2026.01.29
おから

三年前の今ごろ、おからという名前の犬と出会った。それは、初めて訪れた犬カフェで元気に駆け回っていた黒毛のダックスフントで、少し目を離すといつの間にか横に来ているような、そんな自由奔放な子だった。

この日、犬カフェにおいてエサは資格だと知った。エサを持っていないと相手にされず、近寄ってきてもすぐにそっぽを向かれてしまう。おからは吠えながらエサを要求してくるタイプで、チンピラみたいだと思った。

手持ちがなくなり無資格となった僕のもとへ、よそで略奪行為を繰り返していたおからが戻ってきた。粗暴な取り立てに屈すまいと身構えていたが、意外にも隣で仰向けになった。満腹になっていたのかもしれない。

ほどなくして眠りについたおからの腹には乳がついていた。メスだったのか……という衝撃は、そのままギャップとなり好感をもたらした。周りが手を焼くおてんばな姫、というキャラクターにはロマンがあるからだ。

おからのふるまいは、ヒトのビジネスに巻き込まれながらも、飼いならされまいとする生きものとして僕の目に映った。当の彼女は前足を小刻みに動かしながら眠っている。夢の中でもカツアゲをしているのだろうか。

実はこれ以来、動物カフェには行っていない。倫理的な是非を問うつもりはないが、動物側が不特定多数の人間との接触を拒みにくい点が気にかかる。嫌なら一日中隠れていていいような自由が保障されていてほしい。

なぜ今、おからのことを思い出したのかはわからない。今日みたいに寒い日だったからかもしれないし、犬のニュースを見たからかもしれない。元気だろうか。ビニル床ではなく、草むらを走る機会はあっただろうか。

もし自分が何かを飼うことがあるとしたら、おからのようであってくれと思う。こちらの勝手で飼う手前、そちらも勝手であってほしい。大事にすることの見返りを求める気は微塵もないし、その不均衡を楽しみたい。

あの黒い背中が今も、誰の期待もおぶらず、好きにやっていることを願う。

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おから。名前も好きだったなあ。

FIRST CLASS 皆川 律