
僕の好きな1冊の本とポエトリーリーディングを紹介します。
夏川 智希です。
本日、ご紹介するのは、谷川俊太郎・作「生きる」という詩集です。
谷川俊太郎、皆さんご存知でしょうか。
教科書に載っているスイミーの翻訳などをしていると言えば、ご存知の方も多いかもしれませんね。
こちらの「生きる」という詩集は、日々の何気ない日常や、人が当たり前にしている生活の中で、輝く瞬間を気付かせてくれる作品です。
失うことや終わりのあること、人間の醜さを対比にしながら、限りある生命の尊さや、生きることの儚さを教えてくれます。
そして、そんな作品に加筆をして、ポエトリーリーディングに仕上げたのは、私の好きな不可思議/wonderboyというラッパー。
初めて聞いたときは、涙が止まりませんでした。詩で泣いたのは初めてのことで、自分ですごく驚いたのを覚えています。
家族の絆とか人間の本質に私は弱いんだと思います。映画とかでもそういうジャンルは共感してしまって、こっそり涙を拭くタイプです…
何か目標に向かって、頑張っているあなた。
ずっと階段を登り続けるのは疲れちゃうから、そんなときは生きてるだけで尊いんだと、あなたを想ってくれる人がどこかにいる、今はいなくてもこれから絶対に出会える。
生きているということ、それはミニスカート、プラネタリウム、ヨハン・シュトラウス、ピカソ
思い出してみて下さい。
FIRST CLASS
夏川 智希
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谷川 俊太郎・作 「生きる」
加筆・不可思議/wonderboy
※著作権の確認はしていますが、問題があれば削除させていただきます。
生きているということ
生きているということ
生きて生きて生きて生きて生きているということ
のどがかわき
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
生きているということ
生きているということ
鳥がはばたき
海がとどろき
かたつむりははうということ
あなたと手をつなぐこと
ことごとく今回も言葉だけじゃ足りない
ありもしない風景を思い描いては
迷うということ
悩むということ
生きることに対して問うということ
生きているということ
それはミニスカート
プラネタリウム
ヨハン・シュトラウス
ピカソ
全ての美しいものに出会うということ
眠るということ
目覚ましよりも先に目を覚ました瞼
窓枠いっぱいに空の青が広がり
溢れ出す光
溶けるような陽だまり
顔を洗う水道の水がひんやりと冷たい
経度から経度へ朝をリレーしていく
知らぬ国の誰かから渡されたバトンを
しっかりと受け取りまた知らぬ国の誰かへ
毎日朝が来るというありふれた奇跡
花先から一滴落ちた雫が
水たまりの中の青空を揺らした
十日ぶりの快晴にも歓声は上がらない
僕なんてもう踊り出したいくらいなのに
読みかけの小説
古ぼけた腕時計
余計な荷物は何一つ持たずに
洗濯物を干したら出かけるとしようか
今日は何を着ていこうか
さあ行こうドアを開けて一歩外に出たなら
透明な空気をいっぱいに吸い込み
呼吸するということ
そんなことも思えば最近はずっと忘れていた気がする
さあ行こう駅まで
自転車じゃなくてたまには歩いて行ってみようか
急がないということ
そんなことも思えば最近はずっと忘れていた気がする
手をつなぐ親子
寄り添うカップル
各駅停車が景色達を追い抜く
心地よいまどろみ
安らかなうたた寝
ウォークマンはいつだって僕の好きな歌を歌う
読みかけの小説は少しだけ進んだ
古ぼけた腕時計も少し時を刻んだ
待ち合わせ場所まであと15分
もうすぐ君に会える
生きているということ
生きているということ
生きて生きて生きて生きて生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
生きているということ
遠くで犬が吠え
地球は回り
たった今もどこかで産声が上がり
兵士はどこかで傷つくということ
生きているということ
生きているということ
生きているということ
生きているということ
たった今この瞬間が過ぎていくということ
いつかは死ぬとわかっていながら
永遠なんてないとわかっていながら
それでも人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ