
10月10日から、『秒速5センチメートル』の実写版が公開されるらしい。
あのタイトルを久しぶりに目にして、なんとなく、また観たくなった。
アニメ版は2007年、新海誠監督による作品。
僕がこの映画を初めて観たのは、中高生の頃だった。
まだスマホも普及していなかった時代。
当時はただ、切なくて、綺麗で、どうしようもなく胸が痛む——
そんな「恋の話」として見ていた気がする。
でも、大人になってから見返すと、
あれは“恋愛”の物語というより、“時間”の物語だったんだと思う。
人がどんなに強く想っても、
時間は少しずつ距離をつくっていく。
その切なさを、映像と音楽で静かに突きつけてくる。
思えば、人生もそんな積み重ねだ。
置き去りにしてきた想い。
言えなかった言葉。
あのとき選ばなかった道。
そういうものが、いつの間にか自分を形づくっている。
桜の花びらが、舞い落ちる速さで。
人の心も、ゆっくりと、確実に変わっていく。
だからこそ、
あの頃にはわからなかった“優しさ”や“痛み”に、
今なら少し寄り添える気がする。
夜更けに一人、部屋の明かりを落として観た。
静かな映像の余韻が、しばらく胸の中で揺れていた。
FIRST CLASS
松風 慎二