明滅

2025.07.22
明滅

 それは横断歩道を渡った先の、標識の陰で静かに息絶えていました。夏休みに入ってすぐ、通学路に猫の亡骸が現れたとあって、これから部活や補習へ向かう学生たちの間で話題になることは、容易に想像できました。

 信号を待ちながら、そこを通り過ぎていく人々の表情を見ていました。忌避か好奇か、大別すればそのどちらかに分類できましたが、いずれにせよ、やがて感情は薄れ、行き着く先は無関心なのだろうと思われました。

 ところが、予想は少し外れました。遺骸がいつまでも処理されなかったのです。そのあいだ、八月の容赦ない熱光線が皮を灼き、夕立が腐肉を削ぎ、湿風が骨を曝しました。この過程は否応なく関心を引くものでした。

 先日、NHKスペシャル『認知症の第一人者が認知症になった』の再放送を観ました。認知症医療に人生を捧げてきた医師が、その病に自ら侵されていく経過を追った、痛切な内容のドキュメンタリーでした。

 現代において、人があの猫のように野ざらしで朽ちていくことはまずないでしょう。しかし、日ごとに「確かさ」を剥ぎ取り、自己を曖昧にしていくこの病は、人の精神を公然と、生きながらに風化させていきます。

 また、現在公開中の映画『大いなる不在』は、認知症の父・陽二を取り巻く謎を、長く疎遠だった息子が明らかにしていく物語です。陽二は元大学教授であり、その道の権威であったという点で、先の医師と重なります。

 両作に共通して映し出されていたのは、じわじわと蝕まれていく自意識とその不安、家族の葛藤、そして、「それでもなお喪われないもの」でした。滅びゆくなかにも救いはある。そう感じさせられました。

 猫の夏から何年か過ぎた頃、祖父は家族のことを誰ひとり分からなくなっていました。名を告げると、祖父は僕のことを「〇〇さん」と呼びました。涙を堪えきれず、しばらく俯いてしまったのを覚えています。

 それでも、彼の教えたがりで温厚な人柄は何ひとつ変わっていませんでした。穏やかに外を見つめながら周辺の歴史を語ってくれ、時折こちらを覗き込むまなざしには、昔のままのやさしい光が宿っていました。

 喪われないもの。願わくばそれは善いものであってほしいけれど、結局は生き方しだいなのでしょう。善く死ぬためには、善く生きねばならない。毎夏、陽炎に揺れる信号の点滅を眺めるたび、そんなことを思います。

 FIRST CLASS 皆川 律

この日記は昨年、私的に投稿した内容の加筆版です。

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