先が見えないことの価値

先が見えないことの価値

今日は、ふらっと立ち寄った本屋で手に取った一冊の話を。

タイトルは『人生の壁』。
著者は養老孟司さん。
何気なく開いた最終章に書かれていた言葉が、妙に心に残った。

「先が見えてしまう社会の問題」
その一文を読んだ瞬間、ハッとした。

これまでの社会は、“先が見えること”を良しとしてシステムを整えてきた。
でも今は、誰もがその「先の見えなさ」に直面している時代なのかもしれない。

僕たちは、計画どおりに進むことや、効率よく生きることに慣れすぎている。
できることなら無難に生きたい──そう考える人も多いだろう。
けれど、計画や目標があるからこそ、思うようにいかないときに悩み、立ち止まることもある。

逆に、目の前の出来事にその都度向き合い、積み重ねていく生き方もある。
どちらが正しいというわけではないけれど、
先が見えない瞬間こそ、人が成長したり、何かをつかみ取ったりするきっかけになるのかもしれない。

養老さんは、人生とは「学習の場」だとも書いていた。
そして、生きるうえで大切なのは
“とらわれないこと・偏らないこと・こだわらないこと”。

その言葉を読んだ瞬間、少し肩の力が抜けた気がした。
「こうしなきゃ」「こうあるべき」と思い込んでいた自分の中に、
ふっと風が通ったような感覚があった。

本屋での何気ない寄り道が、
心の中に新しい視点を残してくれることがある。
今日のこの本も、そんな一冊だった。

FIRST CLASS
松風 慎二