五感シリーズ⑤ 触覚

五感シリーズ⑤ 触覚

最近、寒さのせいか、「触れる」ということに敏感になっている気がする。

朝、布団から足を出した瞬間のひんやりした床。
その冷たさが、眠気をごっそり持っていってくれる。

洗面台で顔を洗うとき、水(もしくは、ぬるま湯)が頬に触れる感覚が妙に心地いい。
眠い朝ほど、そのひと手間で心と体がゆっくり目覚めていく気がする。

外に出ると、冬の風がコートの袖口からひゅっと入り込む。
首元や頬に触れる冷たさで、この季節がちゃんと来ていることを実感する。

温度って、こんなにも気持ちを左右するものなんだな、と改めて思う。

一日の終わり、湯気の立つお風呂に入って、肩までそっと身を沈める。
何も考えず、ただ「温かい」に身を任せる時間が、いちばん一日の疲れを回復する薬なのかもしれない。

触覚は、目には見えないのに、確かに心に残る。
手を繋いだときのぬくもりや、軽くハグをしたときの安心感みたいに、言葉がなくても伝わるものが、ちゃんとそこにある。

誰かがそっと触れたとき、その温度が、静かに心に残るような。そんな存在でありたいと思う。

FIRST CLASS
今井 かえで

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