僕は映画が好きだ。
それは「趣味」という言葉では、たぶん足りない。
初めて一人で映画館に行ったのは、小学校一年生の頃だった。小さな体で、少し大人になった気分だったのを覚えている。
それから毎月、お小遣いを握りしめて映画館に通った。暗い館内に身を沈め、スクリーンが光り出すその瞬間が、何より待ち遠しかった。
今思えば、あの頃の僕は現実から逃げたかったのだと思う。
映画を観ている間だけ、嫌なことも、寂しさも、全部どこかへ消えていった。
幸せだった時間を思い返すと、そこにはいつも映画があった。
その習慣は、子どもの頃から今の今まで途切れることなく続いている。
気づけば、暇ができると本屋か映画館に足が向くようになった。考える前に体が動いている。たぶん、癖じゃなくて、生き方なんだと思う。
千円をどう使うかと聞かれたら、僕は迷わない。
美味しいものより、映画を選ぶ。
形に残らなくても、腹が満たされなくても、心が満たされるほうを選びたい。
価値観は人それぞれだ。
でも僕にとって映画は、逃げ場所であり、居場所であり、今も変わらず、僕を静かに救ってくれる存在だ。
FIRST CLASS
染居 吉野(そめい よしの)