温泉が好きだ。
改めて考えてみると、「今好きになった」というより、ずっと好きだったんだと思う。
箱根の温泉によく行くのも、きっと偶然じゃない。
どうしてこんなに温泉に惹かれるんだろう。
そう思って、自分のバックグラウンドを辿ってみた。
僕は、おじいちゃんとおばあちゃんに育てられた。
その記憶の奥を探ると、必ず出てくる風景がある。
銭湯だ。
週に一回、時には二回。
近所のスーパー銭湯に連れて行ってもらうのが、いつものことだった。
日課は、おばあちゃんの背中の垢をそること。
小さな僕の手で背中を流されるばあちゃんは、毎回本当に嬉しそうで、
その表情が今でもはっきり思い出せる。
ほぼ毎日、一緒にお風呂に入っていた。
湯気の向こうのばあちゃんの声、
石鹸の匂い、
湯船のあたたかさ。
今思うと、あれは懐かしくて、美しい記憶の一部だった。
高校生の頃、ばあちゃんは突然いなくなってしまった。
母親役を、ずっと当たり前のようにしてくれていた人。
今でも大好きだし、心から愛してる。
面と向かって「ありがとう」を言えなかったことが、少しだけ胸に引っかかっている。
でも、それも含めて人生なんだろうな、とも思う。
ばあちゃん、ありがとう。
会いたいよ。
FIRST CLASS
染居 吉野(そめい よしの)