あの日から、1か月

あの日から、1か月

入店初日は、バー出勤から始まった。

まだ自己紹介日記も投稿されていないタイミングで、
お店のポストに“松風慎二”という名前だけがぽつんと載っていた。
今思えば、誰も知らない“謎の人”として始まったあの日が、
すべてのスタートだった。

飲食業はこれまでやったことがなかったから、
バーでの接客も、お客様のドリンクを作るのも、
すべてが初めての経験だった。

グラスを持つ手が少し震えながらも、
お客様や先輩キャストさんが「大丈夫、ゆっくりでいいよ」と笑ってくれて、
その言葉に救われたのを今でも覚えている。

そんな日々の中で、初めてご予約をいただいた日。
帰り際に「今日は楽しかったです」と言われた瞬間、
胸の奥がじんわりと温かくなった。

もちろん、すべてがうまくいったわけじゃない。
自分の未熟さに落ち込む夜もあった。
でも、そのたびに振り返って、
「次はこうしよう」と決めて眠りについた。

気づけば、入店して1か月。
日記で何を書こうか悩んだり、
キャスで何を話そうか考え込んだりしながらも、
言葉を重ねてこれたのは、
見てくれる人、聴いてくれる人、
そして会いに来てくれる人がいたからだと思う。

出会ってくれた皆さんに、心から感謝を。
これからも焦らず、一歩ずつ。

FIRST CLASS
松風 慎二