『解決策よりも大事なこと』

『解決策よりも大事なこと』

誰かが悩みを打ち明けてくれる瞬間。
それは、信頼の証でもあり、
ある意味では勇気の表れでもある。
言った本人は少し気が軽くなっているかもしれないし、
逆に「話し過ぎたかな」と後悔しているかもしれない。

受け取る側もまた、頭の中で状況を想像しながら、
何とか力になろうと必死に解決策を探してしまう。
特に男は、答えを出さなきゃと思いがちだ。
けれど実際のところ、
明確な答えなんてないことの方が多い。
そして、言葉を選べば選ぶほど、
何も言えなくなる。

それが自然だと僕は思っている。
他人の痛みや迷いを完全に共有することなんてできない。
ただ、半分でも、一割でもいい。
相手の世界を少しだけ想像し、寄り添う。
人が誰かに話をするのは、
必ずしも答えが欲しいからじゃない。
ただ、誰かに自分の世界を共有したいだけのときもある。

その瞬間が生まれること自体が、
他人と自分で作り上げる一つの「世界」なんだと思う。
だから僕は、誰かが打ち明けてくれると、
その話の重さも含めて、どこか嬉しくなる。
そこには「解決」ではなく「共鳴」がある。
言葉が喚起するイメージでつながる、
その一瞬にこそ価値があると信じている。