『消えゆくバランス』

『消えゆくバランス』

ワークライフバランス。
近年よく耳にする言葉だけれど、
いつもどこか違和感がある。

「仕事とプライベートのバランスを取りましょう」
そんな言葉の裏には、
「仕事=嫌なもの」
「プライベート=やりたいこと」
という構図が、
知らないうちに刷り込まれている気がする。

でも、仕事の中にも、
誰かの心が満たされ、自分の心も満たされる瞬間がある。
その時間に、明確な線引きなんてできない。
これが仕事なのか、プライベートなのか。
その境界は、ふとした瞬間に溶けていく。

本来、仕事と人生は分けるものじゃない。
どちらかに比重を置こうとするほど、
かえって不自然な歪みが生まれる。
大切なのは、バランスを取ることではなく、
自然に混ざり合っていくことだ。

仕事も人生の一部であり、
人生の中に仕事がある。
だから、完全に線を引こうとするほど、
どこかで苦しくなるのかもしれない。

ワークライフバランスを大事にするのでもなく、
捨てるのでもない。
「ワーク≠ライフ」という枠組みを壊し、
「バランス」という概念を静かに消していく。

ワークがライフと溶け合ったとき、
それは生き方そのものになる。
「ワーク=ライフ」。
心地よく働くというより、
心地よく生きている。
そんな感覚に近い。