『暁』

『暁』

仕事を終えて外に出ると、
空はまだ暗い。

夜の名残を引きずったまま、
街の呼吸は静まり返っている。
けれどその奥に、
確かに朝の気配が混じりはじめている。

暗いのに、
どこか明るい。

そんな曖昧な時間帯に、
一日の終わりと始まりが重なる。

本来なら、
そのまま眠りに落ちていくはずの時間。

けれど現実は、
そんなに静かじゃない。

積み重なった連絡。
頭のどこかに残る会話。
まだ解決していない感情。

誰かとつながっている幸せよりも、
その重さを感じてしまう瞬間。

喜びと負担は、
表裏一体。

夜が明けていく。

世界はゆっくりと光を取り戻していくのに、
自分の内側は、
まだ暗さを引きずっている。

それでも、
確実に朝は来る。

春分。

ここから少しずつ、
光の時間が長くなっていく。

どんな夜を過ごしても、
朝は裏切らない。

一日を大切にしよう。
そんなきれいごとよりも、
その一日の中で
自分が何を感じているのか。

何に疲れているのか。
何に気分を乱されているのか。
今日はなぜ整っているのか。

そこに意識を向ける。

暁とは、
単なる夜明けじゃない。

自分の感覚の中に
わずかな光を差し込むこと。

そんなことを、
春の入り口で考えていた。