住む場所を変えた。
見慣れていた景色が遠ざかり、
歩き慣れた帰り道も、
過去へと静かに退いていく。
住まいを移すのは、思っているより消耗する。
荷物をまとめ、手続きに追われ、
生活のリズムも崩れる。
正直、面倒なことばかりだ。
それでも人は、ときに動く。
何かを変えたかったのか。
いや、たぶん違う。
先に自分の内側が動き始めていて、
それに環境を合わせただけだ。
人は本気で変わるとき、
居場所を変える。
どんな空気を吸い、
どんな光で朝を迎えるか。
その積み重ねが、
知らぬ間に次の自分をつくっていく。
理由は、後からでいい。
変化とはいつも、
説明より先に起こるものだから。
ここでどんな自分に出会うのかは、まだ知らない。
ただひとつ信じている。
自分の意思で動いた人間だけが、
更新された未来に辿り着く。
新しい帰り道を歩きながら、
前の自分にはもう戻れないと知る。
人の変化とは、
いつだって不可逆だ。