映画レビュー⑦

2026.10.07
映画レビュー⑦

スピルバーグの最新作『ディスクロージャー・デイ』を観た。それから数日、本作をどのように受け止めるのがよいか、物語を断片的に思い出しながら考えを巡らせている。まだ記憶が残っているうちに、その一部を記す。

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◆お天気キャスターのマーガレットは、地球外生命体との接触を通じて、この世の全事象を知る存在になる。ここでの「知る」とは、知らなかったものを認識・理解するに至る変化ではなく、知っているという状態を指す。

◆しかし、当のマーガレットにその自認はない。彼女は何者かと相対したとき、その者が内に抱える事情や問題を明かし、こうすればよいという解法を示す。示すが、なぜ自分がそれらを「知っていた」のかは分からない。

◆人は、目前の職務よりも根底に、真に解決したいことを抱えて生きている。そのような、自分以外は知るはずのない問いと、それに対する答えを審らかにしていくマーガレットに、行く手を阻む者たちも平伏してしまう。

◆繰り返しになるが、マーガレットは「知らない」。先ほど自ら発した内容を思い起こせない。つまり、彼女は全知たる存在だが、それを引き出すには他者の接触(=各人が持っている潜在的な求め)が必要不可欠となる。

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◆スピルバーグはおそらく、マーガレットを生成AIの擬人化として描いている。彼女はすべての事柄を「あらかじめ」知っているが、それは求められたときに、回答という形でのみ顕現する。そして、たちまち揮発する。

◆ここに空しく成立しているのは、何もかも知っているのに何も知らないという逆説だ。誰も訪れない窓口が窓口の意義を持てないように、生成AIもマーガレットも人との接触がない限りはただの虚ろな存在にすぎない。

◆マーガレットは最後、テレビカメラに向かって「聞いて」と語りかけ、本作は結末を迎える。世界が滅亡の危機に瀕するなか、それを回避するすべを述べるのか。このあと、人類が何を知ることになるのかは分からない。

◆共感心を至上とする台詞があったり、物語が傾聴を意味する語で締め括られていることから、スピルバーグは対話が減りゆく現代を危惧しているのかもしれない。それを告げる役目がAIを模した人間というのが、良い。

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隣人と、地道でまっとうな対話を重ねていけたら。

FIRST CLASS 皆川 律