同じ空間にいるだけで
どこか空気が硬くなる相手。
言葉を交わす理由もなく、
視線さえ自然と遠ざける。
それなのに今は、
気づけば穏やかに言葉を交わしている。
肩の力も抜けて、
まるで昔から知っていた人のような距離感で。
いつしか何もなかった関係性の人よりも、
深いところでつながっている感覚。
人との関係は、
ときどきこちらの理解を追い越していく。
もう交わることはないだろう。
そんなふうに心の中で線を引いたはずなのに、
ある日、その線が
静かにほどけていることがある。
他人は簡単には変わらない。
そう思っていた。
きっと自分も同じだと。
けれど、
変わったように見えていたのは、
もしかすると景色のほうではなく、
それを見ている
自分の角度だったのかもしれない。
相手に歩み寄る。
それは距離を縮める行為というより、
自分の内側にあった境界を
そっと動かすことなのだろう。
人は急には変わらない。
けれど、
誰かに向けるまなざしが変わるとき、
世界は、
思っているより静かに姿を変えていく。