ライブレポ④

2025.12.07
ライブレポ④

アルティメットパーティー15、リキッドにて。


アラフォーの少年

今年もトリプルファイヤーは素晴らしかった。4月にチョコパコとのツーマン、そしてsorayaとのツーマンが続き、そのどちらにも行った。が、今回は東名阪ツアーのファイナルとあって、面構えが変わる(こちらの)。

「アルティメットパーティー」と名付けられたワンマンはこれで15回目だ。トリプルファイヤーを初めて見たのは2015年のアルティメットパーティー1のライブ映像だったから、そこからもう10年近く経ったことになる。

昔の吉田(ボーカル)は痩せていたが、今は肉付きがいい。無精髭も生やすようになった。でもMCが下手で、挙動がおかしく、笑顔が愛くるしい生き物なのは変わらない。「推せる」という感覚は彼が教えてくれた。

昨年のアルバム「EXTRA」に参加したフルートの池田若菜さんを含めた7人編成。吉田の動的なアクトに対するバンドの静的なストイックさには毎回舌を巻くが、池田さんはそこに薫る薔薇のようで、一段と音の色気が増す。

整番は良く、ほぼ最前で見ることができた。19時を少し過ぎた頃、吉田以外のメンバーが出てきた。すぐさま"相席屋に行きたい"の長い前奏が始まる。軽妙なアフロビートにフルートの妖しさが灯る。徐ろに吉田が現れる。

先述したEXTRAに収録されているこの曲は、リリース以降すっかりキラーチューンとなった。MVも良い。個人的には後半の「難しい本を読みたい」という詞が好きだ。人の、こうした凡庸さを切り取るのが吉田は上手い。

"相席屋〜"の後は"面白いパーティー"、そして"お酒を飲むと楽しいね"と繋がった。この辺の流れはいつもの安心感がある。酒を片手にあおりながら、酒の歌を歌っている。本番中に飲むのは向井秀徳と同じだから嬉しい。

酒が入ったのに歯切れの悪いMCが挟まれたのち、最近のライブではお馴染みであるが未発表の新曲(早く音源を出してください)が4つくらい続いたと思う。アラブ音楽っぽいリフが良すぎる。早く音源を出してください。

中盤はわりと昔の曲をやってくれた。"Bの芝生"は久々だった気がする。この頃の吉田は特に作詞のセンスが迸っている。"トラックに轢かれた"と同様の哲学的なリリックアプローチ。トラックもやってほしかったな、今回。

終盤は"次やったら殴る"や"サクセス"、"ギフテッド"といったノリやすい定番曲でどっかりと沸かしてくれた。最後はみんな大好き"スキルアップ"。もう十分なほどにトリプルファイヤーはスキルアップを果たしたと思う。

幕間で山本くん(ベース)が物販紹介をしてくれた。アンコールまでの間をそつなくつなぐ役だ。山本くんは見た目が全然変わらないなあ。時が止まっているのかもしれない。ベースもずっと上手だし。なんなんだろう。

アンコールの1曲目は井上陽水の"氷の世界"。前列のマダムが乱舞している。世代か。そういえば、今年のフジロックでは山下達郎の"RIDE ON TIME"をカバーしていた。吉田のカバーはカラオケ感があって気持ちいい。

アンコールの2曲目は初見の新曲"Youtube見て死んだ"。これが大変カッコよかった。10年前のあの日、Youtubeでトリプルファイヤーを見つけて生き返った側としての、何か乗っかるものがあったのだと思う。グッときた。

編成が大きかったこともあり、全体的にかなりアレンジが利いていて、シンプルながらバラエティのある音像だった。曲作りを担う鳥居さん(ギター)に心の中で頭を下げる。来年のワンマンも今から楽しみでならない。

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8日の23時にキャスを予定しています。来てね。

FIRST CLASS 皆川 律