本を読むこと

本を読むこと

今日は、10月27日「読書の日」らしい。
今朝、Xのタイムラインで知った。

そんなこともあって、
仕事終わりにいつもの本屋へ立ち寄ってみた。
何か紹介できるような本があればと思ったけれど、
今日はピンとくる一冊が見つからず、
「まあ、こんな日もあるよな」と思いながら店を出た。

帰ってからふとKindleを開いて、
積読になっていた本たちを眺めていると、
一冊のタイトルが目に留まった。

──『言志四録(げんししろく)』佐藤一斎 著。

これは、前の職場の社長に薦められた本だった。

江戸時代の儒学者・佐藤一斎が、
40年にわたって書き綴った言葉の集大成。
「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録」
の四部から成り、
“人としてどう生きるか、どう学び続けるか”を説いた書。
西郷隆盛や勝海舟など、幕末の志士たちにも影響を与えた名著だという。

その中に、こんな言葉がある。

「少くして学べば、則ち壮にして為すこと有り。
壮にして学べば、則ち老いて衰えず。
老いて学べば、則ち死して朽ちず。」

若い頃に学んだことは未来の礎になり、
大人になって学ぶことは心を枯らさず、
年老いても学び続けることが、人を永く生かすという。

要は──学び続けることが大事だということ。

そしてもうひとつ、序文にこんな一節がある。

「人は環境によってつくられるが、
その環境をよいほうへと変えていくのは、志を持った人間である。
志のある人は、みずからを切り開き、
よき師、よき友に恵まれ、そして学び、励まされ、
一度しかない人生を有意義に創造していく。
人生をよくするのも悪くするのも、
この志次第であることを、この『言志四録』は教えてくれる。」

“志”という言葉は、どこか堅く感じるけれど、
「自分の中に小さな灯を持つこと」に近い気がする。
その灯を絶やさずにいれば、
どんな環境でも、少しずつ前へ進んでいける。

読み進めるたびに、
少しだけ心が整う気がした。

“読む”という行為は、
誰かの人生を少しだけ自分の中に取り込むこと。
そんな静かな贅沢を、忘れずにいたい。

FIRST CLASS
松風 慎二