唯一無二

唯一無二

机の横に置いてあるギターをぼんやり眺める。弦はちょっと錆びていて、フレットには小さな凹みもある。

学生の時から何度も弾いてきた証なんだと思います。僕の努力の証とも言えます。

新品のギターは確かに良いけど、このギターは僕だけの唯一無二のものです。

そんなことを思えば、人の心も似てるなって感じます。使い込まれた跡や傷は、外からは見えなくても、ちゃんと残っているものですよね。

人と話をしていると、言葉ひとつで心が安心したり、逆に少しだけ揺れたりする瞬間があります。

強く触れすぎると傷になってしまうし、遠慮しすぎると何も伝わらない。

ギターの弦の張りみたいに、力加減がすごく大事だなって思います。

でも、人の心に残るのは、完璧な音だけじゃない気がします。和音がぶつかる音も、乾いたボディの音も、その人にとっては唯一無二の大切な記憶になるものです。

だからこそ僕もそんな痕跡を恐れずに、唯一無二な存在になりたいなと思ったりするのです。

FIRST CLASS
夏川 智希