映画レビュー⑤

2025.09.28
映画レビュー⑤

恋愛を「企てる」――自分の意のままに対象を篭絡しようとする――際に、最も重要な手順があります。それは「(この私を)愛するとはこういうことだ」という決まりを、まず相手にはっきりと学ばせることです。

たとえば、フランスの作家スタンダールは著書『恋愛論』の中で、恋愛とは相手に愛を感じさせ、それを増幅させる過程だとしています。そして、愛を感取した相手は自分を美化するようになると(曰く、愛の結晶化)。

つまり、初期段階として「愛とは何か?」を相手に刻み込む必要があるということです。さらに言い換えるなら、それは「愛の美点」を説くことであり「愛の理想」を植え付けることでもある。なんかプレゼンみたいです。

ただし、そこには体験を伴わせなければなりません。相手ができるようになるまで、自らやってみせたり、共にやってみたりする。この「教える―学ぶ」という関係の構築が、恋を企てる上での肝となります。

いやー、先手必勝とはよく言ったもので……

『劇場版 チェンソーマン レゼ篇』
2025年/日本/アクション/アニメ
監督:吉原達矢
原作:藤本タツキ
主演:小谷菊之介、上田麗奈など

【あらすじ】
悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」となり、公安対魔特異4課に所属するデビルハンターの少年・デンジは、上司であり憧れの女性マキマとのデートの帰り道に浮かれていたところ、急な雨に見舞われる。

雨宿りをしていると、近くのカフェで働いている少女「レゼ」と出会う。興味津々な様子を示すレゼに軽々と靡いてしまうデンジ。増していく親密さの影でマキマへの罪悪感を覚えるデンジだが、本能には抗えず……

【感想とか】
本作のヒロインであるレゼは、チェンソーマンの心臓を奪うことを目的とします。彼女はソ連から送り込まれた工作員で、「爆弾の悪魔」でもあり、偶然を装いデンジに接触します。近所にあるカフェの店員として。

レゼはさまざまにデンジを誘惑します。頬を上気させ、体を寄せ、肌に触れ、気があるような態度を取る。こうした媚態はすべて嘘で、訓練によって身に付けたもの。しかし、デンジには覿面に効いてしまいます。

その後、レゼはデンジに勉強中の姿を見せます。学校に行かずデビルハンターの仕事をしているデンジを「珍種」と煽り、ともあれ漢字は読めるようになりたいという彼に、テストと称して「金玉」の読みを問う。

このくだらない遊戯は、デンジから「レゼとなら学校行きたかったかな」という言葉を引き出します。それを聞いてしたり顔のレゼは、夜の学校に忍び込まない?と魅惑的な提案をします。デンジは当然抗えない。

月の光が差し込む教室で、レゼは教壇に立ち、デンジは机に座る。簡単な数式や低俗な英語が出題される。カフェでのおふざけの延長です。それでもデンジにとっては初めての学校で、「教わる」という体験が楽しい。

「普通」に憧れるデンジに刺さったのは、そうした「普通」の数々を「教わる」ことでした。そのまま夜のプールへ行き、泳げないと怖がるデンジに泳ぎ方を教えるレゼ。裸になり、水をかけ合い、肌が触れ合う。

教えてあげる!
 デンジ君の知らない事
 できない事
 私が全部教えてあげる

〜〜

本編においてレゼは明らかに「教える者」として描かれています。それはレゼがデンジより優位であることを示すと同時に、そこに愉悦を覚えているレゼもレゼで、この関係に従属していることを示します。

終盤、「さっさと死んでくれないかな?」と呆れ気味なレゼに対し、デンジは「だったら初めて会った時にさっさと殺しとくんだったな…!」と言います。そのときレゼは何も返さず、ただ戦闘の再開を促すのみ。

このシーンは原作でも一コマ分の沈黙を挟んでいるため、重要です。なぜ最初に殺さなかったのか。その問いにレゼは答えられませんが、何かを感じ取ってはいました。それは嘘の中で生じていた、不可解なリアル。

全部嘘だっつーけど
 俺に泳ぎ方教えてくれたのはホントだろ?

レゼにすべて嘘だと告げられた後、デンジはこう言います。一連の「教える―学ぶ」の出来事がレゼの嘘に基づいていたとしても、デンジの中には「もたらされたいくつかの体験」が本当のものとして残っている。

「教える者」であるレゼもデンジと同じ未就学児でした。親を亡くし、国に監禁され、教わったことといえば人の殺し方か嘘の付き方。学校へ行かないデンジに投げかけた「おかしい」はそのまま自分にも返ります。

自身の体験の欠如を他者に提供する。精神分析の文脈で「補償」と呼ばれるこの行為が目指すのは回復です。レゼはデンジを通じて自分を補おうとした。それが殺しの保留への答えであり、無意識下に灯る光でした。

なんで…
 初めて出会った時に殺さなかったんだろう

 デンジ君
 ホントはね
 私も学校いった事なかったの

〜〜

解説に寄りすぎたので、もう少し感想めいたものを。

まずはアクション映画として、すべての戦闘描写がとにかく素晴らしい。制作元のMAPPAがどれだけの人的資本を投入したのか予想もつきませんが、これほどのアニメーションはそう見られるものではありません。

次に、どうにも映画向きすぎる。作者の前作『ファイアパンチ』や先に映画化された『ルックバック』がそうであったように『チェンソーマン』のレゼ編は特に映画的です。スクリーン体験の価値を先天的に備えている。

アニメの第3話で流れた、マキシマムザホルモンの「刃渡り2億センチ」の再起用も嬉しかった。これ以上ないというシーンでの、痺れる挿入でした。ほかにも劇場の音響でもう一度見聴きしたいと思わせる場面ばかり。

あと白状しますが、普通に終盤泣いてます。最近は映画に限らず涙腺がひたすらに脆いとはいえ、原作の良さを理論値まで増強されて目の前に置かれたらそりゃばちゃばちゃ泣きますよ。レゼ( ; ; )

また長くなってしまいました。
好きな一幕を引用して終わりにします。 

〜〜

俺ぁ都会のネズミがいーな
え〜!? 田舎のネズミのほうがいいよ〜
都会のほうがウマいもんあるし楽しそうじゃん
キミは食えて楽しけりゃいいのか?
ああ
……」(レゼ、沈黙の後、微笑む)

〜〜

FIRST CLASS 皆川 律

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9/29(月)17:00-21:30

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