今日は、防大に入ってすぐの頃の話を。
所属していた中隊で一番の強面。僕より大きな体に分厚い肩幅、頭は丸坊主で声は常に拡声器レベル。
その迫力から、僕の中では“ジャイアン”と呼んでいました。
そんなジャイアンに、僕は入校早々に目をつけられてしまいます。
原因は夜の点呼で行われる「容着点検」。
靴の磨きが甘い、作業服のアイロンが甘い、そして極めつけは「目の輝きが足りない」。
「○○不備!あとで俺の部屋に来い!」──その怒号が飛んだ瞬間、ジャイアン部屋行きが確定です。
まさに、終わりの見えない“強制イベント”の始まりでした。
そこからは地獄の無限ループ。
できなければ怒号、できても「まだ甘い!」。
延々と繰り返されるリトライは、まるでバグったゲーム。
正直、高校生に毛が生えた程度の僕の心は、折れる寸前でした。
でも、一通りできるようになったある日のこと。
指導を終えたジャイアンがポツリ。
「やればできるんだから、しっかりやれ」
その瞬間、胸が熱くなりました。
ただ怒りたいだけじゃなく、本気で僕の成長を願って、時間を割いてくれていたんだと気づいたんです。
しばきの裏にある優しさ。
あの頃は必死で「今日をどう乗り切るか」しか考えられなかったけど、今になって思うのは、誰かが自分のために時間を使ってくれるって、本当にありがたいことですよね。
FIRST CLASS
松風 慎二