
これを超えるライブを、今後体験できるだろうか。
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group_inou(グループイノウ)というユニットがある。トラックを担うimaiとマイクを握るcpの二人組だ。ピコピコ音にラップが乗っかっているので「エレクトロ・ヒップホップ」なんてカテゴライズされていたりする。
ヒップホップといっても、黒人文化に生まれたそれとは異なる。カーチャンに感謝したり政府に中指を立てたりする感じではない。なんというかもっと荒唐無稽で、一瞬のようで、でも普遍的で、どこか懐かしい。
その例をいくつか挙げてからレポに入ります。
以下「」内は歌詞の引用。リンクは公式MV。
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◆BLUE
「水の跡 見た 四日間」という歌い出し。何だよそれとなる。「プラス 大気 四日間」と続くが、ますます分からない。ノスタルジックな曲調で、なんとなく夏っぽい。たぶん晴れてはいる。だけど湿っている感じもする。
その後、サビに現れる「光で気付いた 蜘蛛の巣」というフレーズにびっくりする。そうだ。蜘蛛の巣に気付くのって、朝露や雨上がりで濡れている時だ。巣の向こうには太陽があって、水滴を美しくきらめかせている。
最小限の言葉で情景を見せるのは俳句みたいだ。「浮かんでる 身に有る 重さもなくて」「ちゃぽんと入る」「足から飛びたいな」あたりは海やプールを想起させる。空や、ひょっとしたら意識なんてこともあるのかも。
水に浮かんで空を見ていたら、どちらに浮かんでいるか分からなくなりそうだ。あ、水と大気ってそういうこと? あるいはどこにもいなくなって、意識だけがその狭間をふわふわ漂っているとか。やっぱ夏だなあこれ。
一音目から切ない。8ビットサウンド感のあるレトロなリフ。詞は相変わらずcp節が炸裂している。日常は選択の連続で、その正誤は「さっぱり」だ。さっぱり分からない。人生次第で簡単にあべこべになったりする。
際限なく迫られる選択のひとつひとつが正しかったかどうかなんて、いちいち考えていられない。なんたって面倒だ。だから「段々 意識は遠くなる」し、その繰り返しが招くのは「あっという間の毎日」に違いない。
そんな中で「誰かに」「何かに」「うっとり」してしまうのは仕方のないことかもしれない。なぜなら、選択しないで済むから。夢中でいられたり一方的でいられるのはとても楽だ。何も考えず陶酔していればいい。
そう、「遠くの電車が模型のよう」も「偶然会う 君 静かに話す 時の流れをじっと見てるよう」も「手のひら 髪型 足の組み方」も、どれも巧みに「うっとり」をサジェストしている。実に詩的で的確なリリックだ。
ただ、さっぱりでもうっとりでも時間が過ぎていくことは変わらない。どのみちあっという間だ。それが虚しくて「否定しようか」となる。でも正解は「一層」「見つからない」し、取るべき「コース」も「過ぎ去る」。
このあたりからメロディが希望的な転調を見せる。後半にかけて思いがけず展開する気持ちよさはイノウの魅力の一つだが、CHOICEはそれがとりわけて良い。最後の「ワンツー」部分のクラップはあまりに爽快。
◆EYE
「できない気がしていた できると思っていた」
道すがら、誰しもが持ちうるやるせない自覚を端的に切り抜いている。それは「静かな 視覚の 奥の話」であるけれど爆発的で、今にも溢れてきそうな勢いだ。疾走感がある曲なのにずっと切ない……のに清々しい。
「竜巻 旋風 あぁ めまい」
「かなり 回転飛ばしてる 大都会」
「視界 一見止まってるようじゃない?」
「転ぶ すってんころりよ」
この序盤のライムがなんとも気持ちいい。すってんころりって、もはやEYEでしか耳にしない言葉だよ。日本語の可愛さや自由さをラップに融解させるcpの感性が光っている。こんな羅列、逆立ちしても思いつかない。
読めば読むほど滅茶苦茶で、個々の言葉に意味なんてないように思える。ここまでの解釈だってまったく的外れかもしれない。だけど必ずどこかにフックがある。「炎天下 暗い電飾」。僕はこれだけでごはん三杯いける。
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本当はリンクを開いて聴いてほしいけれど、すでに長文を読まされて貴重な時間を失っているだろうから、ひとまずはcpのライティングの素晴らしさの一端(と僕の熱量)が多少なりとも伝わっていたら嬉しい。
これを踏まえ、ようやくレポへ移ります。
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【LIQUIDROOM 21st ANNIVERSARY】
「HAPPY」 group_inou
繰り返しになる。これを超える音楽的体験を、僕はこの先できるだろうか。できるとしたら、そんな贅沢な人生があっていいのか。そのくらいベストだった。すごいものを見たし、すごいものと一体になれた。
彼らが本格的に活動を再開させてからいくつかのライブに行った。2025 NEW YEAR PARTY、PAS TASTAとのツーマン、シャッポとのツーマン。行くたびにワンマンを待ち望む気炎は盛り、もう限界だった。
そして今回、リキッドルームの21周年に、リキッドルームと縁の深いgroup_inouがワンマンをやることになった。寿命を半分削ってでもチケットを当てなければならなかった。残量が足りていなかったのか、外れた。
最終抽選で落ちた中学受験ぶりに己の不運を嘆いたが、同じくイノウに身命を賭している友人が当てた。これからの時代は友情が流行る。僕が富豪だったら別荘を贈るくらいしていたと思う。庶民だからスタバ券を送った。
赤ん坊の産毛より軽い足取りで迎えた当日、地球の誰よりも聴き込んでいるアルバム『MAP』を再生しながら感慨に耽っていた。今日が終わったらいったいどうなっちゃうんだろう。灰になってフロアに散りたいと思った。
148。一生忘れない数字となった整理番号に導かれて入場する。最前から三列目の好位置を取ることができた。それから開演までの間は何も覚えていない。楽しみ以外の感情が入り込む余裕なんてなかったのだろう。
(近さに興奮してブレた)
オープニングは"ON"だった。そりゃそうだ。今回の公演名「HAPPY」は2024年の元日(!)に唐突にリリースされたアルバムタイトルであり、ONはその一曲目なのだから。かくして僕らの「初々しい逢瀬」が始まった。
間髪入れずに"EYE"が放たれる。客の沸騰したボルテージはそのまま波となって前へ押し寄せた。下に置いておいた水が蹴り飛ばされたが、そんなのどうでもよかった。脇腹に何発か入ったボディブローも関係ない。
熱狂は"MYSTERY"を伝い、MCで一旦アイドリングし、"THERAPY"で再動した。「それはまさに」「サモエドのようです」のコーレスはいつだって楽しい。途中からイルカくんも出てくる。この時だけ三人だ。
続いて"ORIENTATION"。イノウのMVの中で最上位に好きだ。AC部のセンスが綺麗に詰まっている。それがステージに映し出され、その前では二人がパフォーマンスしている。妖しい曲調も相まって夢みたいだった。
とろんとしたところで"STORY"が流れ込んでくる。3rd盤の『DAY』に倣った順番だった。「世界に抱かれるために ほつれた銀河 季節柄」って、何度聴いても最高の詞だ。このあたりで大好きがカンストした。
カンストしたのに、続く"CATCH"の危険なイントロに脳を揺らされる。もうどうにかなりそうだった。CATCHやってくれた……という感動は、終演後に時間差で襲いかかってきた。CATCHやってくれた!(;▽;)
そして1st盤の『FAN』から"QUEST"。メロディが好きすぎるあまり、QUESTをピアノで弾いている人のYoutube動画を狂ったように再生していた時期があった。懐かしさと当時の感情がなだれ込んでぐちゃぐちゃに。
ちょっと長めのMC。最近cpは伊坂幸太郎にどハマりしているらしい。読書は中学生以来だって。やっぱり天才だ。というか伊坂がイノウの曲に影響を受けて一冊書いたって話、マジだったんだ。今度読んでみようかな。
そんなcpのリリックセンスが爆発している"HALF"。漂う寂寞感は、遠い過去のようでも、遥か未来のようでも、取り残された現在のようでもある。「窓枠外したガラスが不安定」。外「れ」たではないんだよな。
感傷ムードを"SWAN"のビートが破壊する。口が自然に「一時の迷い 欲しくて」と動く。「午後の体温 花火師好み」。どうしたらこんなクリティカルな詞が浮かぶんだ。どうしてつがいの白鳥がはっきり浮かぶんだ。
そろそろ終盤に差し掛かるかと思われる頃合いの"HAPPENING"で爆沸きする場内。EYEと並んでメーターが強制的に振り切れる曲だ。「九十九里浜 バンクシー」ってなんだよ。来るわけないだろ九十九里浜に。
フロアがこの日何度目かの最高潮に達すると、"HEART"が心地よいテンポを刻んでくれた。この曲のBPMは110で、これは人が歩くペースに近い。ダッシュ練の合間に挟まれるインターバルを思い出す。
その後はimaiの「ここからジェットコースターだから」という言葉の通りだった。ファン垂涎の"RIP"、安全とは程遠い"SAFE"、全速力の"KNUCKLE"、衝動が詰まった"MAYBE"と、駆け抜けていった。
袖に戻った二人を拍手が引き戻す。フルマラソン後のランナーのように息絶え絶えのcpと、汗だくになりながらもバイタリティを保つimaiのコントラストが面白い。リキッドルームに感謝が告げられ、アンコールへ。
"HAPPY"だ。しっかり回収してきた。当然すぎる選曲に、cpのやさしい声色に、ぴったりなフレーズに、多幸感あふれるトラックに、もはや何もかもに感動していた。涙を溜め、この幸福を逃すまいと思った。
最後は"9"だった。夏が終わる。青空が浮かぶ。9回裏だ。まだ終わりたくない。印象的な終盤のポエトリーリーディング。もう終わっちゃうんだ。「これから どこに進む その先の反対」「そこには誰もいなかった」。
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帰り道、あまりにも幸せで、死ねるのだとしたら今だと思った。友人も似たようなことを言っていた。間違いなく人生のハイライトになる。それで、あとはもうありがとうしかなかった。ライブ中も叫んだけど。
「ハッピーな人はゆらりゆらり誰と踊る」
「ハッピーな人は未来繋ぐ夢と踊る」
夢をありがとう。ありがとう、group_inou。
FIRST CLASS 皆川 律
《直近のスケジュール》
9/23(火)※応相談
9/29(月)17:00-21:30
《ご利用料金》
☆初指名キャンペーン実施中☆
︎︎︎︎︎︎┣ 2.5時間 18,000円
┗ 3.0時間 23,000円
2時間 24,000円
3時間 36,000円
4時間 48,000円
5時間 60,000円
6時間 72,000円
・指名料 1,000円
・交通費 1,000円(23区内)
(大宮/千葉/横浜/群馬は交通費2,000円)
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